母親の遺産につき、遺産分割調停により妹との間で調停和解が成立した事案
事案の概要
相談者(Aさん)の母親が亡くなったところ、母親は遺言で自宅不動産についてAさんの妹(B氏)に相続させるという公正証書遺言を残していました。しかし、AさんとB氏の間では、遺言の内容に関わらず、全ての遺産を姉妹で2分の1ずつ分割する前提で遺産分割協議を進めていました。そのため、AさんとB氏は、相続財産の一部である預貯金(約2200万円分)を2分の1ずつ分配しました。
しかし、その後、B氏は、上記の公正証書遺言を使い、Aさんに無断でB氏名義に母親の不動産の所有権移転登記を行いました。
Aさんは今後どのように対応したらいいのか弊所に相談されました。
解決の内容
遺産分割調停の申し立てをし、調停の場で、半年間ほど審理を重ねた結果、AさんとB氏との間で分配済みとなっていた預貯金2200万円分については、そのままAさんが1100万円、B氏が1100万円を受領することで合意したうえで、未分割であった遺産(総額約350万円)についてはほぼすべてをAさんが相続することに加え、約650万円の解決金をB氏からAさんに支払ってもらうことを条件に、B氏が遺言で移転登記を行っていた不動産(時価5500万円)についてはB氏の単独所有とすること等を内容とした調停合意が成立しました。
解決のポイント
本件はAさんとB氏の協議により全ての遺産を2分の1ずつ分割するつもりで、遺産の一部である2200万円分の預貯金について、B氏が1100万円を受領してしまった後に、不動産の分割方法等に争いが生じ、B氏が遺言を使用して不動産の移転登記を行ってしまったため、既にB氏の手にわたっていた預貯金1100万円の返還をAさんが請求できるのかといった点等が争点となりました。
こうした点について、時間をかけて訴訟手続きで争うことも検討しましたが、Aさんとも協議した結果、Aさんも紛争が長期化することは望ましくないと考えたことや、B氏も一定の歩み寄りを見せたことなどから、調停申し立てから6か月ほどで上記の内容での和解による解決が成立しました。